人間の眼は誰かと眼を合わせるだけのものではない。人間の手は、誰かの手を取るためだけのものではない。その眼は空を見て、星を見て、宇宙を観ることもできるし、その手はスプーンを持ち、ハサミを用い、弓を引くことができる。人間の身体と精神には人間外の事物とのコミュニケーションを経ることではじめて発動する能力があり、芽生える欲望がある。

長く安定した冬に、ささやかな知らせがぽつぽつと来て、花びらが一枚ずつ開くようにゆっくり変化が始まると思うのですが、そのもどかしさとか、変化の中にいることを感じる不安に、生きている実感があると思います。

革命はいつもインテリが始めるが、夢みたいな目標を持ってやるからいつも過激な事しかやらない しかし革命のあとでは、気高い革命の心だって官僚主義と大衆に飲み込まれていくから、インテリはそれを嫌って世間からも政治からも身を退いて世捨て人になる。

彗星かな。いや、違うな。彗星はもっと、バァッて動くもんな。

有機体が辿り着いた人型という究極の柔軟性を持った形を、機械的に最高の性能を出ないからと変えてしまうのは、人の知恵の傲慢である

重力の井戸の底で

いつもここから

便座は恐らく冷たいだろう 又吉直樹

学生時代のバイトでいやなことがあった帰り道、遠く遠く遠くの知らないまちで花火が上がっているのが、ビルの隙間からほんの少しだけ目に入ったときのことを思い出す。すごくきれいで圧倒的で、華やか。でもその花火は、わたしのものではない。わたしの手からすり抜けて、どこか知らないひとのために打ち上がっている。わたしは疲れた身体を引きずって、誰もいない暗い道をうつむき歩きながら、遠い花火の音を聞いている

同じ問題を二度解くような無駄はいやだ